
障害者支援施設「にじ」を退所後に就職したAさま。現在、就労定着支援センターで支援をさせていただいています。
脳出血によって右に麻痺が残ったAさまが就職されてから1年。ひとり暮らしも2年目に入りました。
今回は、麻痺のために右手が使えず、右足にも装具が必要なAさまが、ひとり暮らしをしていくためにされているさまざまな工夫をご紹介します。

ひとり暮らしをするにあたってとても大切なことが「転倒しないこと」。
転倒しない=けがをしない、ということは、仕事の継続にもつながります。
そこで、転倒を防ぐ工夫として、Aさまは、玄関や洗面所にも椅子を置いています。
靴を脱ぎ履きする際に椅子を使うのは想像に難くないと思いますが、お風呂場で着がえや洗顔・歯みがきなどをするときも、椅子に座ればより安全におこなえます。

装具があたって破れることがあるのを考え、靴は多めに用意しています。
靴は、横幅が広いものを選べば市販品でも履くことができるため、おしゃれなAさまもいろいろな靴を楽しんでいます。

また、料理や食事、食器洗いにはすべり止めが必須。使用する場所によって違うすべり止めを用意しています。


さらに、ひとり暮らしで自炊をするAさまには、釘つきのまな板も必要になったため、就労定着支援センターのスタッフが手作りしました。

これからの季節、雨の日の通勤も増えますが、傘は折りたたみを使います。そうすれば、必要のないときにはカバンに入れることができ、手を使えるようになります。
こうした工夫は本当にちょっとしたことなのですが、するとしないのとでは大きな違いがあります。

もちろん、麻痺がありながらひとり暮らしをしていれば、不便なこともたくさんあると思います。
それでも「しょうがないですよ」「だいぶ慣れました」と明るく話してくださるAさま。
日々の生活に小さな工夫を考え、実践しながら安全で快適な暮らしをつくり、「この先5年、10年、単身生活と仕事を続けたい」という目標をかかげて仕事にはげまれるAさまを、わたしたちはこれからも応援していきます!

病棟の食堂テーブルに湯呑みを置いていくAさま
障害者支援施設「にじ」で、就労移行支援の訓練を約3年続けてこられたAさま。この4月に就職が決まり、「にじ」を卒業してついに社会人への復帰を果たされました。
「にじ」では就職を目標に、訓練に一所懸命取り組んでこられたAさまは、出された指示をきっちりと守り、正確かつていねいに仕事をなさる方です。
気持ちもいつも安定しており、ほかの利用者の方と協力して行う作業も、しっかりおできになっていました。
そんなAさまになら「できることがある!」とわたしたち支援者の意見が一致し、今年の1月から現場での実習がはじまりました。
※写真はすべて実習時のようすです。

患者のみなさまにお出しするお茶を作ります

使用済みのたくさんのシーツを片づけ
病院でおこなった実習では、シーツの片づけや消毒作業などの仕事に真摯に取り組み、この病院への春からの就職が決まりました。
病院の看護師、介護福祉士がこれまでしていた仕事からAさまにできる作業が割りふられ、「にじ」就労移行支援の先輩である病院スタッフのBさんが担当する業務も分担することとなり、毎日の担当業務が決まりました。

事務室で廃棄書類をシュレッダーにかける作業中

食堂のアクリル板を拭きあげます

診察室のデスクもすみずみまで消毒
Aさまが就職してもうすぐ約1か月。
病院のスタッフや患者のみなさまから「助かっています」「きれいに拭いてくれてありがとう」という声援をもらい、Aさまは今、充実感でいっぱいの毎日を送っています。
新型コロナウイルスの影響で、きゅうくつな生活がもう2年以上続いています。
Aさまが毎日一所懸命、ていねいに続けている消毒作業は「新しい生活様式」が必要となった令和の時代に欠かせない大切な仕事です。
「世間が必要としているものと、あなたの才能が交わっているところに天職がある」というアリストテレスの名言を、Aさまの働く姿を目にしながら、「にじ」スタッフはかみしめています。

別府リハの就労定着支援センターでは、障がいのある方が、雇用された企業などで就労を継続できるよう、関係者との連絡調整や雇用に伴い生じる日常生活または社会生活を営むうえでのさまざまな問題について、相談による課題の把握、指導および助言をおこなうほか、体調管理についてのサポートなどもしています。
今回は、脳卒中とそのリハビリテーションのち就職し、現在別府リハで就労定着支援を受けているAさんの体調管理についてご紹介します。
約7年半前に患った脳卒中により、右片麻痺の後遺症が残ったAさん。
発病当時から麻痺側の緊張が高かったため、緊張をやわらげる治療も続けながら就職し、まもなく3年が過ぎようとしています。
仕事を続けていくために大切なことのひとつが体調管理。
どんな方にもあてはまりますが、とくに身体の障がいをもたれた方は、働きだすと入院生活の頃のようにリハビリをおこなう時間もとりにくく、機能を維持することが大変になります。
そんななか、Aさんは、就職後も毎日運動やストレッチをコツコツ続けています。
その成果か、体調を崩されることもなく、毎日の仕事をしっかりこなすことができています。また、身体機能は維持するだけでなく向上もしています。
そこでどんな体調管理をしているのか、実際に教えてもらいました。
まずは運動です。
スクワットを30回、エアロバイク30分、素振り10回、振りあげ運動10回をおこなっています。

裸足でスクワット30回

両手の振りあげ運動
次にストレッチ。
滑車を100回、右のひざやひじ、手首や手指を、自分の体重や左手を使って伸ばしていきます。

膝をしっかり伸ばします

ひじもしっかり曲げます

手首も伸ばします
さらに、もうひとつ欠かさないのが脚のチェックです。
Aさんは、歩くときには短下肢装具を使用されていますが、装具が当たる場所には傷や足裏のタコができやすく、皮膚科で治療をすることも何度かありました。
そこで、入浴後などにしっかり自分でチェックをすることを習慣にしているのです。

装具があたる場所の傷には要注意!
これらをきちんと続けているAさんですが、毎週金曜日だけ、運動とストレッチをお休みすると決めています。
なぜかというと、金曜日は好きなお酒を楽しむ日だからです!Aさんはこれを楽しみに、日々体調管理をがんばっているんですね。
わたしたちはAさんから、「日々、自分の身体に目を向けること」が就労の継続につながることを教えてもらいました。
その方の業務内容や生活スタイルによって、必要な運動やストレッチは異なる場合がありますが、身体の障がいがあり、就職をめざしている方の参考になればと思います。

実習でタオルを洗濯するA様
別府リハビリテーションセンターの 障害者支援施設「にじ」で就労移行支援を受けていらっしゃる利用者のA様が、阪南理美容株式会社 美容プラージュ様で職場実習を受けました。
約3年の長期にわたり、「にじ」で社会復帰に向け訓練をがんばってこられたA様。就職をめざしてさまざまな会社の見学や面接にも積極的に参加された結果、美容プラージュ様への採用が決まり、令和4年2月から働きはじめました。
仕事の内容は、美容室で使用したタオルの洗濯と、それをきれいにたたむ作業です。

脱水を終えたタオルを取り出します

次は乾燥機に入れます

乾燥機のごみをていねいに取っていきます
A様は、スタッフの方がスムーズに仕事をおこなえるように、裏方として支えたい!と意気込んでいらっしゃいます。

乾燥が終わったタオルを取り出します

乾いたタオルをていねいにたたみます
美容プラージュのスタッフの方は、両足に障がいのあるA様の段差昇降や狭い通路の移動などを気にかけてくださり、働きやすいよう、さまざまなご提案もいただきました。
今回の実習に至るまでに、「にじ」では「大分障害者職業センター」と連携して事業所開拓や見学、実習をおこなってきました。
雇用後は、大分障害者職業センターのジョブコーチ支援を活用していきます。
この場所に立ち、仕事をするまでに、A様ご自身も多くの困難を乗り越えました。
どんな困難にあっても、他を責めることなく、さまざまな人からのアドバイスを素直に受けいれ、いつも真面目に一生懸命取り組まれるA様の姿がありました。
わたしたち「にじ」スタッフは、そんなA様が、この「社会復帰」のスタートラインから着実に前進していかれることを強く願っています。
12月2日、別府リハの障害者支援施設 にじ、障害福祉サービス事業所 みのり、別府リハビリテーションセンター障害者生活支援センターと障がい者就業・生活支援センターたいよう(大分県別府市)とで、利用者のみなさまへの円滑な支援にむけた意見交換会をおこないました。

意見交換をおこなう障がい者就業・生活支援センターたいようの恒松センター長(最右)と別府リハの職員
障がい者就業・生活支援センターたいようは、就職を希望している、あるいはすでに在職中の、障がいのある方々が抱える課題を解決するために、雇用事業所や福祉の関係諸機関と連携して就業面・生活面の一体的な支援をおこなうことで、その方々の就職・事業所への定着をはかることを目的とする事業所です。
障がい者就業・生活支援センターたいようと、にじやみのり、障害者生活支援センターとがかかわる場面はそれぞれ異なりますが、障がいのある方の一般就労にむけて連携をとっていくことは共通のテーマです。
今回の合同会議では、障がい者就業・生活支援センターたいようの主任就業支援担当でもある恒松 克己センター長から、その役割や機能についてていねいなご説明をいただき、にじやみのり、障害者生活支援センターが、それぞれどのように連携をとっていくことが望ましいかを考える、貴重な機会となりました。
別府リハでは、今後も障がい者就業・生活支援センターたいようとの定期的な意見交換をおこない、障がいのある方の就労支援について一緒に考えてまいります。

改造を終えたAさんの車両。Loopのスタッフの方から教わります
障害者支援施設「にじ」で就労移行支援の訓練を終え、令和元年9月より復職されたAさん。
けがをする前に購入されていた自動車では車いすの積み込みが難しいため、ご家族の送迎で通勤されていました。
しかし、今後のことを考え、ぜひ自分で運転して通勤できるようになりたい!ということでご相談いただき、就労定着支援センターで支援することとなりました。
まず、車いすを変更するか改造車にするか、ご自分で通勤できるようになるための方法を一緒に考えていきました。
そして、福祉車両のカスタマイズなどをおこなっている株式会社Loop様に相談にうかがったところ、車いすはそのままで、車にリフトをつけることで積みこみができるようになることがわかり、改造車を購入することになりました。
Aさんは、両手機能と両下肢に障がいがあるため、ドアの開閉やリフトの操作、車の乗りこみなど、多くの点で工夫が必要でした。
でも「一人で運転して移動ができるようにしましょう。自分たちにできることはなんでもします!」という心強い言葉とともに、Loopのみなさまがたくさんの改造と工夫を加えてくださって、ついにAさんの車両が完成!
5年ぶりの運転で不安もあるので、別府リハの自動車運転コースで、久しぶりの運転に挑戦することになりました。

車いすをつける位置を確認

リフトで車いすを吊り上げます

別府リハの自動車運転コースで練習。車いすもきれいに収まりました
練習の成果で、Aさんは車いすの積みこみもスムーズにできるようになり、5年ぶりに運転席に座ることができました。

5年ぶりに座る運転席です
雨の日の車椅子の積みこみをどうするかなど、まだ解決すべき点はあるものの、職場の駐車場についても上司の方にすでに相談し、通勤できる日はもうまもなくです。
障がいを持ちながら働きつづけようとすると、さまざまな課題に直面して、立ち止まってしまうこともあります。
わたしたちはこれからも、利用者のみなさまと一緒に考えて課題を一つひとつ乗り越え、前に進めるよう支援していきます。

マニュアルを見ながら仕事を覚えます
障害者支援施設「にじ」の就労移行支援を利用していらした元「にじ」利用者のWさん。
令和3年1月4日から、新たな職場である、別府市の大分県厚生連 鶴見病院に出勤となりました。
人生初めての事務職、情報管理室勤務です。

先輩職員の方から仕事を教わるWさん
仕事の説明をしていただき、マニュアルを見ながら、2台のパソコン画面に向き合います。
「頭から湯気が出そう・・・」そんな言葉をつぶやきながら、真剣に取り組みます。
Wさんは、約4年前に、病気により両下肢と排泄の障がいを負うことになりました。
病院と「にじ」でのリハビリを経て社会復帰されました。
現在、移動は車いすを利用して勤務しています。
「にじ」入所中の就労移行支援のプログラムで、ご自身の病気や障がい、仕事にあたって配慮していただきたい点などをまとめた資料を作成しました。
その資料を持ち、職場の上司の方に説明をさせていただきました。

上司の方にWさんご自身で障がいの説明をされました
「私が心がけていることは、今の身体機能を受け入れて、気持ち的には健常時と変わらずに生活するようにしています。歩行練習を継続し、車いすの使用が当たり前にならないように注意します。」と決意表明をされました。

上司の方々も真剣に聞いてくださいました
その言葉に対し「今はデスクに椅子を置いていませんが、いつでも椅子を置きますから、がんばってください。」と上司の方から温かいお返事をいただきました。
約4年ぶりの社会生活の始まりです。冷たい冬の風が吹く令和3年の1月、職場の方に温かく迎えられ新しい道へ踏み出したWさん。お仕事頑張ってください!

イラストも入れてわかりやすくまとめたスライド
1月29日に別府リハの障害者支援施設「にじ」の就労移行支援では、職場の人や就職活動に向け自分を紹介する、「私について」というプレゼンテーションの発表会が行われました。
就労移行支援の利用者のみなさまは、昨年の11月から準備を始め、自身の病気や障害について調べ、まとめ、向き合いました。

本番に向けて原稿を読む練習をします
パソコンやスライドの作り方を利用者同士で互いに教え合いながら作成し、いよいよ発表の時が訪れました。

発表会当日は会場づくりもご自分たちでおこないました
発表は、時に笑いが起こるような内容や感動する内容など、みなさまお一人おひとりのお人柄がよくあらわれた内容でまとめられていました。

発表後には質疑応答も。するどい質問にヒヤヒヤ
みなさまはそれぞれ、普段接している中ではわからないような障害を持ち、苦しみながらもそれを補う工夫をしながら笑顔で生活をしています。
その方のことを良く知れたり、色々な障害の内容を知れたりと充実した時間を過ごすことができました。
発表されたみなさまが、このプレゼンを使ってご自身を紹介し、将来に役立てることができるように願っています。
障害者支援施設「にじ」で就労移行支援を利用されて復職に向けた準備をおこなっていらっしゃるB様。
いよいよ職場である「社会福祉法人 一燈園」様で実習をさせていただくこととなりました。
今回はその様子をお伝えします。
仕事に戻りたい!その一心で続けたリハビリ

右手のみを使ってお茶をいれていきます

合間を縫って空いた食器を洗います
B様は約2年半前に脳出血を発症されて、左側の手足に麻痺が残りました。
それから今日に至るまでの間、仕事に戻りたい一心でリハビリに励んでこられましたが、その道のりは決して順調ではありませんでした。
ご自身が腰や膝を痛めたりご家族が体調を崩されたりと、復職に向けたリハビリを中断せざるを得ない出来事もありました。
それでも、B様は懸命に前に進みつづけ、ついに今回、職場で仕事をさせていただくところまで来ることができました。
「ひとりのスタッフとして見ています」の一言がうれしかった

モップがけをおこないます

今はこまめな消毒がとても大切。手すりをていねいに拭いていきます
麻痺のあるB様は、以前のように速く歩くことはできません。
作業も右手だけでおこないます。
それでも、以前働いていらした時のことを思い出し、「今の自分にできること」をご自身で考えて取り組まれました。

おしぼりも右手だけでたたみます
ほかのスタッフが忙しく走りまわる中、焦らずご自身のペースでできる雑用をていねいにおこなっていると、上司の方から「ひとりのスタッフとしてBさんのことを考えています。ぜひこれもやってみて!」と声をかけていただいたそうです。
そんなちょっとしたひとことが本当にうれしかった、とB様は話してくださいました。
11月にいよいよ復職します!
B様は11月にみごと復職を果たされます。
いつも前向きで、楽しいことを見つけ、大きな声で笑う姿がとても素敵なB様。
これからの生活や仕事で大変なことがあっても、きっと笑顔を絶やさず、職場である施設の利用者様に元気を与えていかれることと思います。
わたしたちはこれからもB様を応援していきます!

事務作業のプログラムで作成した資料を朝礼で読み合わせます。
障害者支援施設「にじ」では、毎週火曜日に就労移行支援を受けられている利用者のみなさまが勉強会をおこなっています。
今回はその準備から勉強会本番に至るプログラムの様子をご紹介します。
資料づくり
このプログラムの特徴は、資料の準備から勉強会までのすべてが、社会で働くことをめざす利用者のみなさまの仕事の訓練である、ということです。

資料にする記事をパソコンで入力します。
まずは勉強会で使う資料づくりから始めます。
就労移行支援のプログラムのひとつである「事務作業」の時間に、「職場の教養」という冊子から、利用者のみなさまが記事を選んでパソコンで入力し、資料を作成します。
冊子をよく見てミスのないように文章を入力したら、最後に漢字にルビをふって完成です。
読み合わせと感想の書き込み
完成した資料は、最初の写真のように朝礼の時間に読みあわせをし、そのあと、おひとりずつ感想を書いて。

読み合わせを終えたら、全員が自分なりの感想を書きこみます。
書くことが難しい方もいらっしゃるので、その時は重要だと感じた文章に線を引いていただき、発表の際にはその箇所を読み上げてもらいます。
感想の発表

同じ文章を読んでもそれぞれに感想は異なります。個性豊かな感想に、時には笑いが巻き起こることも。
今回は「大目に見る」というタイトルの記事が配られたのですが、ある利用者の方からは「結婚前には両目を大きく開けて見よ。結婚してからは片目を閉じよ」という部分に「自分は逆だったな(笑)。自分の見方を変えることの大切さがわかった。」という感想が聞かれました。
勉強会は社会復帰への準備の場
このように、勉強会の資料には、みなさまが社会復帰したときに役立つ記事がたくさん盛り込まれています。
この勉強会は、パソコン入力や文章作成の練習になるだけでなく、社会人としてのあり方、考え方をふりかえる場にもなっているのです。